災害派遣医療チーム(日本DMAT)養成研修

2024年08月04日

※このページは厚労省・地方自治体・医療機関のものではなく、医療機関に勤務する一隊員の運営するページであり、内容や意見は個人的なものであります。災害時の救急医療行政への理解促進、DMATの認知度向上のために紹介するものですので、内容に関する問い合わせ等は新潟の道路探索屋までお願いします。 

DMATの法的根拠(国家資格ページで紹介する理由)

 新潟の道路探索屋は県内の災害拠点病院に勤務しているが、令和6年度の日本DMAT隊員養成研修を受講することができた。DMAT制度については「新潟DMAT隊員養成研修のページ」で紹介しているので本ページでは、DMATの法的根拠について説明したい。

【災害対策基本法】第34条、第35条

第三十四条 中央防災会議は、防災基本計画を作成するとともに、災害及び災害の防止に関する科学的研究の成果並びに発生した災害の状況及びこれに対して行なわれた災害応急対策の効果を勘案して毎年防災基本計画に検討を加え、必要があると認めるときは、これを修正しなければならない。 ⇒中央防災会議が防災基本計画を策定すると定めている

2中央防災会議は、前項の規定により防災基本計画を作成し、又は修正したときは、すみやかにこれを内閣総理大臣に報告し、並びに指定行政機関の長、都道府県知事及び指定公共機関に通知するとともに、その要旨を公表しなければならない。

第三十五条 防災基本計画は、次の各号に掲げる事項について定めるものとする。

一 防災に関する総合的かつ長期的な計画

二 防災業務計画及び地域防災計画において重点をおくべき事項

三 前各号に掲げるもののほか、防災業務計画及び地域防災計画の作成の基準となるべき事項で、中央防災会議が必要と認めるもの

2 防災基本計画には、次に掲げる事項に関する資料を添付しなければならない。

一 国土の現況及び気象の概況

二 防災上必要な施設及び設備の整備の概況

三 防災業務に従事する人員の状況

四 防災上必要な物資の需給の状況

五 防災上必要な運輸又は通信の状況

六 前各号に掲げるもののほか、防災に関し中央防災会議が必要と認める事項


【防災基本計画】第2編 各災害に共通する対策編>第2章 災害応急対策>第4節 救助・救急、医療及び消火活動より抜粋

○国〔厚生労働省〕は、災害発生時に迅速な派遣が可能な災害派遣医療チーム(DMAT)に参加する医師、看護師等に対する教育研修を推進するものとする。⇒国がDMAT隊員養成研修を行う根拠

○被災都道府県は、災害派遣医療チーム(DMAT)等及びドクターヘリに関する派遣計画の作成等により、医療活動の総合調整を行うものとする。その際、災害医療コーディネーター及び災害時小児周産期リエゾンは、被災都道府県に対して適宜助言及び支援を行うものとする。⇒被災都道府県が地域内のDMAT運用を調整するルール

○被災地域内の医療機関は、状況に応じ、都道府県知事との協定に基づき、災害派遣医療チーム(DMAT)・災害派遣精神医療チーム(DPAT)・災害支援ナース・救護班(以下「災害派遣医療チーム(DMAT)等」という。)を派遣するよう努めるものとする。⇒被災地内のDMAT指定医療機関はDMATを派遣する努力義務を有する

○被災地方公共団体は、必要に応じて、速やかに医療関係機関又は政府本部に対し、災害派遣医療チーム(DMAT)等の派遣について要請するものとする。その際、 災害医療コーディネーター及び災害時小児周産期リエゾンは、被災地方公共団体 に対して適宜助言及び支援を行うものとする。⇒被災自治体は医療機関や政府にDMAT派遣を要請できる

○国〔厚生労働省、文部科学省〕、日本赤十字社、独立行政法人国立病院機構、独立行政法人地域医療機能推進機構及び被災地域外の都道府県(市町村)は、医師を確保し、災害派遣医療チーム(DMAT)等を編成するとともに、必要に応じて、公的医療機関・民間医療機関からの災害派遣医療チーム(DMAT)等の派遣を要請するものとする。⇒国がDMATに派遣要請する根拠

○政府本部の長は、災害派遣医療チーム(DMAT)等の派遣を的確かつ迅速に実施するため特に必要があると認めるときは、その必要な限度において、関係指定行政機関の長等又は関係指定地方行政機関の長に対し、災害派遣医療チーム(DMAT)等の派遣の実施について必要な指示をするものとする。⇒国はDMAT派遣に際し、指定行政機関等に指示を行えるとする根拠。(総理大臣が厚生労働省(=指定行政機関)に対し、DMAT派遣に関して指示を出せる。)このほか、原子力災害時には経済産業省への指示なども考えられる。この他にも「指定公共機関」というものがあり、事前の協定によりDMAT活動を支えてくれている。例えば、DMAT隊員登録証があれば通行止めの高速道路を通行することができる(各地域NEXCOが指定公共機関 )ほか、DMATの参集に鉄道輸送を活用する(JR各社が指定公共機関)ことができる。

○災害現場で活動する警察・消防・海上保安庁・自衛隊の部隊は、必要に応じて、合同調整所を設置し、活動エリア・内容・手順、情報通信手段等について、部隊間の情報共有及び活動調整、必要に応じた部隊間の相互協力を行う。また、災害現場で活動する災害派遣医療チーム(DMAT)等とも密接に情報共有を図りつつ、 連携して活動するものとする。⇒警察や消防、海上保安庁、自衛隊とDMATが協働する根拠。新潟の道路探索屋も令和6年能登半島地震で珠洲市に派遣されたが、孤立地区の診療に回った際に、自衛隊が医師・看護師とともに高機動車に載せてくれたおかげで救急車で入れない積雪の山道を超えて地区へ到達できた。医療機関のチーム4,5名だけでは活動に限りがあるが、全組織が共通の土俵にたち、同じ方向性をもって活動することができるにはこの項が一番のミソであると感じている。

DMAT養成研修の全体像

 厚生労働省のDMAT事務局は東日本(独立行政法人国立病院機構災害医療センター内)と西日本(独立行政法人国立病院機構大阪医療センター内)に置かれ、それぞれ日本DMAT隊員養成研修、技能維持研修、政府防災訓練の企画を行っているほか、東西事務局で統括DMAT養成研修、ロジスティックチーム研修、隊員資格の管理を分担している。また、災害時には広域災害救急医療情報システム(EMIS)を通じてDMAT隊員への支援も行っている。 

 DMAT隊員養成研修は4日間研修(いきなり日本DMATを受けるもの)と2.5日研修(各都道府県で局地DMATとなった者が受講する広域災害対応研修)が、年間20回から30回ほど企画されている。各回の受講定員は1チーム4名×10チームほどであり、各都道府県に配分されている。厚労省から各都道府県に年間の研修予定が通知され、各県の地域医療政策担当部局からDMAT指定医療機関に募集がかけられる。今回、新潟県チームとして県から厚労省に推薦を受けることができ、(実は令和5年度に所属病院から県に手上げしたものの、推薦漏れとなっていた)受講が叶った。

仙台での研修

 3日目には、広域医療搬送を行う際に患者の安定化処置とパッキング、自衛隊航空機への搬入を行う広域医療搬送拠点臨時医療施設(SCU=Staging Care Unit)の実働訓練を行った。自分はSCU本部指揮所の業務調整員役となり、無線から飛んでくる情報、本部統括の発言、患者受け入れ情報をまとめたクロノロジーの作成、関係機関の連絡先をまとめたコンタクトリストの作成、自衛隊機の飛来時刻や患者搬送先を確認しSCU診療部門に伝達するなどの内容で訓練を行った。これを実際には空港のエプロンや格納庫で、騒音や風雨、寒暖に耐えながら行う必要がある。また、隊員の寝泊りする食料や移動用燃料、トイレの調達も並行して行う必要があり、過去の事例を学んで想像力を働かせながら訓練することで、自分のスキルに何が足りないかを思い知る非常によい経験となった。