巻郷土資料館の「のぞきからくり」
新潟市巻郷土資料館
新潟市西蒲区巻甲3069-1
2024年11月のある週末、ドライブのついでに旧巻町の郷土資料館に立ち寄った。昔の消防庁舎を利用した資料館で、巻地区の郷土資料(古文書、文献、民俗資料、考古資料等)の保存・収集と公開を行っている。中には「のぞきからくり」(屋台を使った紙芝居のようなもの)が現存しており、全国で唯一実演可能な状態で保存されている。本当に偶然にも口上師が練習を開始するところで、二演目を観覧することができた。
旧消防署の跡地にある巻郷土資料館。訪問当時は入館料無料だが、令和7年4月より有料化(大人260円)する模様。
常設の資料室内には2台の「のぞきからくり」がある。
右にあるのは「幽霊の継子いじめ」。細馬宏通氏のホームページでストーリーが詳細に考察されている。
https://www.12kai.com/perspective/nz_mukashi.html
屋台上部は縮緬で立体的に仕上げられている。前妻の幽霊が継母の子どもと間違って実子を殺してしまう場面に学校の先生と巡査が遭遇するシーン。観音開きになるのでぜひ現地で中を見てもらいたい。
上下段にのぞき窓がついていて、ここから内部を覗きこむ。屋台は半円形になっており、蝶番のピンを外すと分割して持ち運べる。江戸から明治時代には屋台を持ち運んで興行し、収入を得ていた人がいるのだ。
のぞき窓はレンズになっていて、内部の障子に描かれた幕が上下することでシーンが切り替わる。背後の照明が立体感を演出する。
「幽霊の継子いじめ」の屋台は一部がはがれているが、古い半紙を再利用されていることが分かる。江戸時代は現代風にいえばSDGsの世の中だったのだ。
左にあるのは「八百屋お七」で、以前の大火で知り合った恋人に再び会いたいがために、町に火を放った若い娘が火刑に処される有名な話である。丙午(ひのえうま)の7月7日生まれのお七の逸話から、この年に生まれた女は気性が荒くなるという迷信が流行り出生率が下がることでも知られる。
恋人とあるく男女を見て、お七が恋人に会いたいと思うシーンだろうか。
上段の絵はひっ捕らえられたお七がお奉行の情けで「歳は13,14か」と訊かれる(15以上だと火あぶりになってしまう)が、正直に「丙午の7月7日生まれ、16歳」と答えてしまう場面。下の観音扉が開くと、観音様が迎えに来てお七は無事に召される。
「のぞきからくり」と共通して、「越後の毒消丸」の薬行商も角海浜(現在の西蒲区巻地区)が発祥とされる。資料館にはこのような行商の道具や農具、民具なども展示されていて、昔の暮らしを知ることができる。
毒消丸の薬袋(やくたい)の版木も残っている。
35ミリフィルムの映写機があった。恐らく映画館を営んでいた個人所有だったと思われるが、「のぞきからくり」を衰退させた映画(映写機)と対照的な展示にしたらより良くなりそうだ。
「八百屋お七」を見た後に明治~大正時代の火消しポンプを見ることになるとは…